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院長インタビュー

Vol.3
栄養療法について

Q. 新しく栄養療法を始められたとお伺いしました。そのきっかけを教えてください。

直原廣明院長

今、食品に含まれる栄養素がちょっと減ってきていて、普通に食事をとっていても必要な栄養が十分にとれていないという現実があります。巷には加工食品が溢れていて、本来入っている栄養素が入っていないことも原因のひとつかと思います。

例えば野菜ジュースひとつにとっても、ほとんどの場合、表示されているだけの栄養素はそれ程入っていません。野菜などは、有機栽培などは別として、昔に比べ土壌が悪くなっているためか、ビタミン・ミネラルが十分に含まれていないようです。肉にしたって何を飼料としていたかわからないのであれば、どんな影響をうけているか知ることはできません。本当に今、すべての食品に対する安全性が脅かされていると感じています。

現代の私たちにとって、栄養素の高い食品・食材を選ぶかということは、とても難しくなってきています。その結果として、がん患者様や、治療が難しい病気の患者様が増えていると感じています。また、鬱の症状を訴える患者様が増えている原因は、一言でいえば「ストレス」となってしまいますが、食事から栄養素がうまく摂取できていないことで、ストレスを受けやすくなっているともいえるのではないでしょうか。

ですから、栄養についてはとても気を付けなければいけないと感じていました。栄養療法というのは、必要な栄養をしっかりとバランスよくとることによって細胞の働きを向上させ、病気になりにくい、あるいは病気を治す、という、人間が本来持っている自然治癒力を引き出すという考え方です。海外では「オーソモレキュラー」と言い、分子栄養学ともいわれるそうです。

もちろん食品から栄養素をしっかり摂取できればいいのですが、それが難しい場合は、サプリメントで補っていきます。

Q. 食品だけではなかなかすべての栄養素を補うことが難しい現代において、サプリメントはある程度必要だということでしょうか。

サプリメントを否定するものではなく、なるべく良いサプリメントをとることによって、人間が本来持っている、身体を治す力を引き出していこうという考えです。サプリメントに抵抗を持つ患者様もいるとは思いますが、それなら食事にはより一層気を付けていかないといけません。自然のものを、ということがなかなかできない時代なので、サプリメントを使用することは仕方のないことだと思っています。

とりあえず今の状態をなんとかしたい、そんなきっかけで栄養療法を取り入れることにしました。

Q.栄養療法は妊婦の方だけでなく、すべての方に向けた治療法なのですね。

はい、これは妊婦さんだけではなく、もう少し広く、がんになりにくい体にするとかアンチエイジング的な事も含めてその人の身体の状態をいい状態にする、という事を目指しています。そうすることによって、病気になりにくい、あるいは若く元気に生きられるよう、健康長寿に貢献したいと思っています。

アンチエイジングというと美容的要素で考える方が多いようですが、そうではありません。本当は「元気に長生きする」という意味です。ですから、沢山の薬を飲みながら寝たきり、であるというのは良いことではありません。元気でちゃんと動けて、健康な人生を生きるということが、真のアンチエイジングだと考えています。妊婦さんも元気でないと元気な赤ちゃんを産めないのと同じです。

最近では、妊婦さんに様々な病気が現れる場合、それは妊娠したことによるものでななく、そうでない方と全く一緒だと思っています。 病気の原因をたどっていくと、妊婦さん自身の栄養不足、などの原因が潜んでいます。それが結果として、赤ちゃんが小さいとか、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症、胎盤が剥がれてしまうなど、様々な病気となって現れてしまいます。更に、身体のどこかに悪いところがあるにも関わらず、妊婦健診時に分からない面も多くあります。

体重や血圧、問診だけで、栄養面まで把握することはなかなか難しいのが現実です。血液検査である程度はわかるけれども、病気として現れてから初めて介入していては遅くなってしまう。やはりもっともっと早めに、本当は何か潜んでいるのではないかというのを見ていかないといけないと感じています。

Q. 妊婦さんだけでなく、健康な人を増やしたいという広い考えでいらっしゃるんですね。

実は栄養療法で、普通の血液検査では見つけることができなかった病気を早期に発見できる手法もあります。私にとっては目から鱗で、栄養療法のすごさに感激したところでもあります。

例えば貧血気味で内科を受診すると、ヘモグロビンの値が何グラムなので貧血ではないと診断されてしまいますが、栄養学・栄養療法的に考えれば、実はこれは鉄不足であるから、それに合わせた治療ができるのです。そうやってもっと患者様の健康に介入していけば、元気にいる事ができるようになります。

今、人間ドックや特定健康診断では、費用面から検査項目を減らしていると聞いています。自費診療で補えばいいという考え方もあるかもしれませんが、基本として調べるべき項目さえもどんどん削られてしまっているため、栄養面の問題まではわからなくなってしまいます。

健康診断を受けても、健康かどうか診断できないというのは本末転倒です。表面的な部分しか患者様をみていないし、本質を分かっている医者であれば何を診断すべきかは自ずとわかるのではないでしょうか。医療費の問題を嘆くこともわかりますが、病気になってから対処するのでは、余計に費用がかかると私は思います。

まだ当院での取り組みは始まったばかりですが、これから広がると思います。大阪には他にも、認知症の専門医で栄養療法を取り入れている先生もいます。栄養療法を加える事によって認知症がよくなる、或いはパーキンソンで歩けなかった人が歩けるようになる、鬱が改善する、そういった話も聞くことができました。

薬を使わなくても、必要な栄養をとることによって、本来持っている自然治癒力を引き出すというのはとても素晴らしいことだと感じています。

Q. 自分の体が活性していくことは、本当に素晴らしいことだと思います。妊婦さんがそれに気づかれることによって、当然赤ちゃんもご自身も元気になって、お子さんを育てる過程で栄養について考える意識が芽生えることは、大事ですね。

妊婦健診や母親学級ではよく「いま赤ちゃんが生まれたら、赤ちゃんに何を食べさせようと考えると思います。でも実際、今あなたのお腹の中に赤ちゃんがいて、赤ちゃんに栄養をあげているのです。自分自身が今何を食べているか注意しないと、変なものも赤ちゃんに与えてしまうし、栄養素が足らなくなったりもする。だからこそ、現時点で自分が何を食べるかがとても大事だということを早い段階から学んでいただきたい」ということをお話しています。

Q. 栄養療法のお話について、妊婦さんからはどのような反応がありますか。

反応は人それぞれですね。サプリメントをとることに抵抗を感じられる方がいらっしゃるのもわかっておりますし、それは捉え方次第だと感じています。

私としては無理に勧めることはしたくないので、一通りご説明した後、最後は妊婦さんご自身に判断していただいています。インターネットで簡単に調べられる時代だからこそ、私から直接声をかけ、価値観を伝えたいと思っています。

賛同してくれる医師仲間も、どんどん増えています。

Q. 先生のお話を聞けるのは妊婦さんが中心になるかと思いますが、これから赤ちゃんが欲しいと考えている人やもっと若い世代の皆さんに伝えたいことはありますか。

女性の皆さんには、今自分自身が食べているものの成分について、もっと考えていただきたいです。 生きていくための食事はとるけれども、栄養面から食事内容をみたら無茶苦茶な内容、ということが多いですね。

例えば妊娠を考えた場合に、最近は葉酸を取りなさいという話をよく耳にしますが、実際は鉄分やビタミンB群などが不足している人がほとんどです。 若い女性は生理などで鉄分が取られますので、どうしても鉄をしっかりと取らないと追いつかない。 しかし食品に含まれる栄養は不足してきているから、ビタミンB群と鉄の摂取量は極端に減っています。 またパンや麺類といった小麦系の食事が増えていることも、ビタミンB群が取れなくなっている原因です。

急にアレルギーになったり、腸の調子が悪くなるという病気が増えているのも、そういった背景が一つの要因だと考えられています。

Q. 有名なテニスプレイヤーが実は小麦アレルギーであると聞いて驚きましたが、現実にアレルギー患者の方は増えているんでしょうか。

そうですね、日本人にも小麦アレルギーの患者は結構いらっしゃいます。 自分では表面的な症状(重度の花粉症、鼻炎がひどい、湿疹がでる、アトピーなど)にしか気が付いていないけれども、意外と腸が悪くなっている人が多いですね。

「グルテンアレルギー」で検索してみるとわかるのですが、腸漏失症候群と呼ばれるリーキーガットという概念があります。 簡単にいうと、腸がスカスカになってしまうことで免疫力などが落ち、消化吸収がうまくいかなくなることで、機能性腸症候群と呼んでいます。 今、腸内フローラや腸に関する様々なことが話題になってきていますが、便秘や下痢を繰り返すといった身近な症状に目を向けることも、結局はアレルギー症状にまで全部繋がっているんです。

栄養療法について私が勉強を始めて一年半程になり、自分自身も分かってきたところですので、これから情報発信し広めていきたいと思います。


なるほど。直原先生から生で聞くお話は、とても勉強になります。ネットで調べたり、本で字面で読むよりも、理解の深さが全然違います。
是非多くの人に、先生のお話を聞いていただきたいです。

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